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N I S H I N E L U R E W O R K S


おおのさんとの出会い


オカッパリでデカバス専門に狙っている凄い連中がいるらしい・・・・。
60アップがけっこう出ているらしい・・・・。
なんでも、ジグヘッドのスイミングで釣っているらしい・・・・。
どうもそれは名古屋の連中らしい・・・・。
ついに70アップが出たらしい!


 そんなまことしやかな噂を耳にしたのは、私が滋賀県の彦根市でハンドメイドルアー「ドリームラッシュ」の製作に打ち込んでいた1996年から98年の事です。

 当時、琵琶湖のほとり彦根港から徒歩わずか30秒という、ルアー開発には最高の環境に住んでいた私は、毎日のように彦根港で竿を振り、ルアーの研究開発に明け暮れていました。

 そんな折、湖北〜湖東エリア一帯のあちこちで耳にしたのが冒頭の噂でした。

 琵琶湖で一度でもオカッパリをされた事のある方なら容易にご想像頂けるかもしれませんが、ボートと違って制約の多いオカッパリでは、春のスポーニング期以外に岸からデカバスを狙って釣る事はなかなか難しく、それどころかその広大さゆえに何処で釣りをしたらいいのかすら分からず、途方に暮れてしまった方もきっと多いのではないかと思います。

 かく言う私も釣り込めば釣り込むほどその難しさを知り、そんな琵琶湖の面白さにのめり込んでいたある日、その噂の主人公が名古屋の「ルアーショップおおの」というお店に集まるエキスパートであるという事を知りました。

 そう、最近ではすっかり有名になった軽量ジグヘッドを使ったワームのスイミング釣法、いわゆる「名古屋釣法」「ミドスト」「レベルストローク」などと呼ばれる釣法ですが、常吉リグ全盛、ジグヘッドはボトムで使うものという時代に、彼らは独自のスタイルを確立し、デカバスを次々に仕留めていたのです。

 彼らの存在は当時の琵琶湖で伝説そのものであり、そして、その震源地は「ルアーショップおおの」に間違いありませんでした。

 ちょうどその頃、中部地区の販売店開拓を目標にしていた私は、営業活動も兼ねて名古屋のおおのさんにバイクを走らせる事を決意しました。



 もともと人付き合いが苦手な性分もあって職人の道を選んだ私にとっては、営業活動なんて口から心臓が飛び出してしまうぐらい苦手な仕事なのですが、なんせルアーを買って頂かない事には生活をして行くことができません。

 しかしながら、これから自分が向かおうとしているお店は伝説的な達人達の集うお店・・・・自分なんぞにはさぞかし敷居が高いんじゃなかろうか?と嫌でも緊張してきます。

 高速を降り、お店が近づくにつれて緊張はどんどん高まり、“やっぱり止めて帰ろうか“とまで思ったのですが、ここまで来てしまったし、高速代ももったいないし、そうこうしているうちにお店についてしまったし(笑)、覚悟一発”えいやっ!“とばかりにルアーを抱えてお店に飛び込みました。

 それが大野のおじさんとの出会いでした。

 ひとたびお店に足を踏み入れると、自分の気負いとは裏腹に暖かいお店の雰囲気、そして何よりおじさんの穏やかな笑顔にほっとした私は、さっきまでの緊張をすっかり忘れ、夢中でルアーの説明をさせて頂いたように思います。

 ふと気がつけば、おじさんの人柄にすっかり引き込まれた私は、すっかりオオノファンになっていたのでした。

 きっと、そんな大野のおじさんやおばさんの人柄に魅了され、お店に足を運ばれる方達も多いのではないでしょうか。



 あれから時は流れ、色んな事が変わりましたが、また再び大野のおじさんのお店にルアーを置かせて頂ける事になりました。

 コツコツとではありますが、今後とも精一杯の気持ちを込めてルアーを作り続けて行きたいと思います。今後とも何卒宜しくお願い致します。


西根さんの現在の工房。ビーツァはここで生まれた。

2006年10月30日 カナダより

ルアービルダー 西根博司

(2006.11.4掲載、2007.3.23更新)